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2016/05/21

究極の射(仮)3


前回までで、矢へのエネルギー伝達率が極限に高いことが究極の射では、
というところまで進みましたが、今回は矢の「仕事率」に着目していきます。

仕事率というと、矢に課せられた課題の達成率です。

課題の要素はいくつかあり、当たり前なことを含みますが
1つずつ押さえていきたいので、まずは弓術での流派での話を少しだけ紹介します。



弓術のとある流派では、上手であることの目安に三要素を挙げていて
「飛・中・貫」といい、これを追求してきたものがあります。
順に、飛距離・命中・貫通力だそうです。

また、他には「中・貫・久」という流派もあり、久とは中・貫のハイパフォーマンスを
長く続けられることで、パフォーマンスの安定性を追求しています。
毎日200射ぐらいしないとダメだったそうです。

(高校時代は毎日60射~80射ぐらいでヘトヘトだったので
200射は当時からすると考えられない数でした。)




数多くの流派があり全てについては知らないのですが、およそ似通ったもので
あると推測しますし、ここで注目したいのは先に上げた流派は違えども、
中と貫だけは弓矢において外せないものだと分かります。

当然ながら、威力がどれだけあっても当たらなければ意味がありません。
逆に、当たってもヘナチョコな威力であれば、かすり傷程度となります。

余談ですが、太古より原始的な狩猟道具であった弓矢は
少なくともこの2点を外しては利用価値がなかったわけですが、
中には命中だけを強力に確保し、威力は少しの傷でも良いように
毒を利用してきたケースも多々ありますね。
ヤドクガエルは名前にもなるぐらい矢毒として用いられてきました。





では、ここで察しの良い方は、「貫と飛は同じ事じゃないのか?」と気づかれたと
思いますので、中・貫・飛・久の意味と意義を私なりに掘り下げてみます。

中…矢の先端である鏃(矢尻)が目標に当たること。または到達すること。

貫…運動エネルギー(速度と質量)が大きいことと、目標物の面に対し垂直に
   矢の進行方向と鏃・矢の重心が一致して当たるほど貫通力は増す。

飛…運動エネルギーが大きいことと、進行方向に対して矢が僅かな上向きだと
   滑空するように飛び、飛距離が伸びる。

久…最低限の強さの弓を毎日使うには体力もさることながら、
   合理的な射法でなければ長続きはできない。
   いかにローコストで弓を引けるかにも注目しているのでは。

たしかに、貫と飛はどちらも運動エネルギーが大きいことが肝心ですが、
主に矢の重心位置で貫と飛は結果を異にします。

貫通力は前重心の矢がよく、飛距離は後重心によってその差は顕著に
現れます。それと命中に関しても前重心のほうに軍配があがります。

また同じ重心の矢であっても発射の技術により、少し前のめりにしたり
僅かに上向きにすることで対応できるともされています。




それでは、競技ルールなどの具体例あげて求められる
課題要素の違いを見ていきましょう。

・アーチェリー競技は、主に畳程度の強度の物に紙的を貼り、中心に近いほど
点数が高い。飛距離は18~90mと様々。

・現代の弓道では、近的では的枠直径36cmに貼られた紙を破けば的中とする。
的は土の壁に掛けられているので矢は土に刺さる。飛距離は28m。
遠的では60mでアーチェリーと同様の条件の時もある。

・射流しといって飛距離だけを争う競技や、堅物射抜きといって
鉄板を射抜き貫通力を競うものもあるんだとか。(私は未体験です。)

・流鏑馬のように、不安定な馬上にて近距離の的を
矢継ぎ早に射ることが求められることも。

・江戸時代には三十三間堂の通し矢といって、軒下の約120mを
高さ約5mや幅約2.5mの制限の下、24時間でどれだけ射通すか
という競技が盛んになり、最高は1万3千本中8100本以上も通した話が
あるが、いつ聞いても信じられない単位です。

・昔であれば戦での鎧を貫通することが求められたので
威力への追求は大きかったことでしょう。


このように様々な課題を中・貫・飛・久の4つで見ても、
どの要素が求められるかにより矢(射)の仕事率は変わるのです。

従って究極の射も、如何に運動エネルギーを矢に与えるかだけでなく、
厳密には矢が目的に適う仕事をしたかで話が完結するのです。

しかし、それには鏃や矢の形状・重心、そして弓までも見直して追求しなければ
ならないのですが、まずはごく普通の弓矢での射法と発射の段階を見直すことが
当面の私の目標なので、道具についてはいつになることやら。

ただし、安全でラクチンなローコストな射で、矢に如何に運動エネルギーを
与えるかが射の本質と考えるので、これを追求すれば自ずと様々な課題を
クリアしていけると思っています。

なぜなら、矢に運動エネルギーを極限まで与えること(飛・貫)と命中率は、
突き詰めると両立するものだからです。

それは、弓矢は同じことをすれば同じ所に飛ぶ、と因果関係がハッキリしており、
同じだけ極限的にエネルギーを矢に与えたら同じ所に矢は飛ぶ筈なのです。

あとは何度も同じことが出来るかの安定度の問題ですが、これが実に曲者で、
同じことをしているつもりでも同じ結果にならない…。道具や的のせいにしても、
違うのは自分の射なのです。

しかしながら、安定度を高めるのは、繰り返すべき究極の射を
見定めてからなので、安定度も現段階では二の次です。



まとめると、どのような課題だろうとも矢の仕事率を高めるには、
発射時に如何に運動エネルギーを矢に与えるかが根本になるので、
発射の瞬間にそれが達成されたのかを確認できれば
究極の射を少なからず体現したと言えるでしょう。

つづく

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